大将からひとこと

第十回:しげ真開店

過ぎてみれば5年の年月なんて
あっという間でした。

無我夢中で働き、平成2年1月のある日、母親から、
不幸の連絡が店にあり(まだ携帯電話のない時代)、
お父さんが癌で余命6ヶ月だと。

家に帰っても24時頃。
家族とは顔もあわすこともない生活でした。

さすがの私も動揺は隠せません。
久しぶりに早く帰り、いろいろ話を聞き、
私もこの年まで親の苦労は見てきましたが、
親孝行などまったくしたことがなく、
心にひっかかるものがありました。

最後だけはと!今勤めている料理屋を退社し、
1~2ヶ月だけでも看病をしようと、
母親とふたりで見ていきました。

病院の先生の宣告通り、父は6月に亡くなり、
最後の時は今でも鮮明な記憶があります。

癌による痛みとの戦いは壮絶なものでした。
最後の言葉は死の2~3日前に、

「日出鯖の松前寿司が食べたい」

との言葉でした。
(薬で朦朧とし、食べれない事もわかっている状態での言葉でした)

当然、買ってきて口元へ持っていっても
食べられませんでした。

でも私としては、この言葉が嬉しくて、
子どもの作った寿司が
本当に最後の最後迄心残りに
思っていてくれていたのですね・・・(涙)

私はこの時に商売をやろうと心に決め、
相棒に電話をかけました。

現状を話し、お互いに今から開店の日まで
アルバイトをし、1から店作りのノウハウ、
経営の勉強など何とか年内を目途にと走り回り、
鶴林寺の新しい道沿いにテナントが出ているとの
情報が入り、二人で見に行くと大きさ・立地条件・
家賃の全てが気に入り、トントン拍子に話が進み、
平成2年11月2日いよいよオープンを迎える事になりました。


・・・つづく

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