大将からひとこと

第十八回:料理3

日本料理の基本中の基本は出汁です。

水と昆布と鰹節の絶妙なマッチング、
何事にも言えない上品さと香りの良さ。
この出汁を基本に煮物・吸物・割り出汁などが
つくられていきます。

朝一番に火を入れ、仕事の最終に火を入れると
日の仕事は終わりです。

長い一日の始まりと終わりの仕事です。

最高のタイミングで出汁のとれた時の
味付けのスムーズさと、
何か苦味・旨味の出ない出汁の日では
一日の仕事の流れが大きく替わります。

吸物ひとつ取り上げても、塩加減が微妙に合わない。
首をかしげながら5分~10分と時間が過ぎてゆく

なんとも不満足な一日の始まり。

やはり煮物も微妙に味付けが気に入らない。
そんな一日は疲れます。

一日として同じ出汁は出来ません。
これが我々の仕事のおもしろい所でもあり、
苦しくつらい所でもあります。

何気なく簡単に見える仕事ですが、
奥がすごく深いです。

母親が朝早くから家族の朝食を作りますが、
味噌汁の味が毎日微妙に違う。

具材が違うからかな~?とか、
母親の機嫌が悪いとか、
子どもの頃考えたことが想い起されます。

今考えれば出汁はそれだけ難しかったのでした!
(自分が体験しなければ理解できませんね。
 私は愚かな人間であると常に反省の日々です。)

その味噌汁が母親の愛であり、心であったと。
心の味が今も私の基本中の基本であると、
今頃になって分かったような気がします…
そして愛情一滴…。


・・・つづく

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